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201712/31

2017映画のおはなし。

こんばんは。2017年も残りわずかとなりました。
今年も心に残った映像作品を、簡単な感想とともに振り返りたいと思います。
大衆受けはしないけど、私が超良いと思った映画を中心に評価しています。
ネタバレは極力避けていますが、結構ポロりするのでご注意下さい。
昨年に続き素敵な出会いが多く、甲乙つけ難くもありますが…まずは今年のベスト5

◆『グラン・トリノ』2008年公開/アメリカ
愛する妻を亡くしたばかりの老人ウォルトは、アジア系移民の町と化したデトロイトで暮らしている。
反りが合わない息子たちとも疎遠になり、亡き妻が頼った神父すらも寄せ付けようとしない。
また、人種差別主義者である彼は、隣に越してきたモン族の家族をも快く思っていなかった。
そんな彼の誇りは丁寧に磨き上げた愛車グラン・トリノ。しかしある時、同族のギャングに脅された隣家の少年タオがグラン・トリノを盗もうと忍び込んできて…。

定番の頑固おじいちゃんと少年の友情物語。
しかし、似たテーマの作品は数あれど『グラン・トリノ』ほど、心にずしっとくる作品はなかなかありません。主人公ウォルトの生き様を刻み付けられるような衝撃作です。本作は主人公ウォルトの心理描写がとても緻密。良くも悪くも人間味に溢れています。彼がモン族を嫌う背景には従軍した頃の重い過去があり、複雑な気持ちを引きずって生きているんですね。時に苦しみ、選択を誤り。歳を重ねていてもウォルトは完璧な人間ではありません。葛藤し最後に彼はタオ達を守るための「答え」を見つけます。明るい結末の作品ではありませんが、そんなウォルトの姿はとてもかっこよく、不思議と清々しい気持ちになるのです。本当の強さを教えられたタオは、託されたグラン・トリノでこれからは自分の道を前向きに進んでいくことでしょう。クリント・イーストウッド監督作品の中でも特にイチオシ。主演もクリント・イーストウッドですが、彼が「俳優最後の仕事」に選ぶのも納得。

◆『チェンジリング』2008年公開/アメリカ
1928年のロサンゼルス。電話会社に勤務する母クリスティンは息子のウォルターと2人で暮らしていた。ある日、クリスティンが仕事から帰宅するとウォルターは忽然と消えていた。警察に捜査を依頼し、5ヵ月後。ウォルターが見つかったと一報が入るが、そこに現れたのは全くの別人だった。再調査を依頼したクリスティンだが警察から精神異常者のレッテルを貼られ、精神病院に入れられてしまう。

息子を失った母クリスティンの悲痛な訴えを、ロス市警は保身の為ことごとく無下にします。
恐ろしいのは1920年代、実際に起きたゴードン・ノースコット事件を被害者視点で描いた実話であるということ。それを知らずに観ていたので、途中まで『シャッターアイランド』的な展開の作品かと思っていましたが、大間違いでした。悲劇が幾重にも折り重なる展開は、本当になんとも言えない気持ちになります。
でも主人公クリスティンの姿は哀しくも強く美しい。ある意味、救いのない話なのですが…不思議と後味は悪くありません。私がクリント・イーストウッド監督作品を好む理由の1つに「過度な映画的演出がない」という点が挙げられます。『ダンサー・インザ・ダーク』とか『グリーン・マイル』、どちらも名作ですが登場人物の行動にもどかしさを感じたり、やたらアクが強いキャラクターが居てモヤモヤしたりしてしまいがちです。映画的にはそういう個性を持ったキャラクターがいるほうが、お話も進んで面白くなるのでしょうけど…。
そういう不自然さがなく、人間の素直な反応が描かれているのがとても良い点だと思っています。本作の登場人物も、残酷さまでもがリアル。都合よくハッピーエンドにもならないのです。娯楽なんだから、悲しいことは忘れて楽しみたいの!って方には向かないかもしれませんが…私のように「砂糖菓子の弾丸じゃ撃ちぬけねえんだよォォォ!」ってタイプの方には超お勧めしたい一本。

◆『ザ・ギフト』2015年公開/アメリカ
新居への引越しを済ませ、新しい町での生活を始めることになった夫サイモンと妻のロビン。
ある日、買い物に出た先でゴードという男に声をかけられる。ゴードはサイモンとは高校時代の同級生だという。何かと親切にしてくれるゴードだが、頻繁にギフトを持って訪ねてくる彼にロビンは違和感をおぼえはじめる。

ゴード役の俳優、ジョエル・エドガートンが監督、脚本、制作、主演を務める意欲作。
華やかさはありませんが、ストーリーがよく練られておりテンポも良い名作。
タイトルも皮肉めいていて、とてもセンスがよく、エンディングの意味も深いものがあります。
ジャンルがサイコホラー・ミステリーとなっている為「サイコ野郎がヤバイもん贈りつけたり、突如襲ってきたりするんだろ?」って思いますよね。ポスターの印象も相まって、私もてっきりそっち系だと思っていましたが…意外性抜群でした。むしろゴードは賢く理知的で、全くサイコ野郎ではないです。血なまぐさい描写もありません。これは美しい復讐劇です。胸を躍らせながら観ましょう。ギフトの正体はお楽しみに。個人的には「あらあら、なんて素敵な贈り物!」って感想が漏れるスッキリ映画でした。「事実ではないことを、言っただけ。」1つのテーマをとても上手に広げていった素晴らしい作品でした。※他レビューを読むと結末の見解が別れているようですが、この作品のテーマを思うに「言っただけ。」でしょうね。

◆『モーガン プロトタイプL-9』2016年公開/アメリカ・イギリス
シンセクト社の研究施設で開発された人工生命体 試作品「モーガン」が研究者の目をペンで突き刺した。危機管理コンサルタントであるリー・ウェザーズは、施設の調査・評価のため施設へ派遣されるが…。

「人工生命体モーガンの脅威を描く」という、日本語キャッチコピーを鵜呑みにすると期待外れになる本作。蓋を開ければ脅威より悲哀を強く感じるメッセージ性が高い作品です。少なくとも人工知能暴走パニック系ではありません。アニャ・テイラー=ジョイ演じる「モーガン」と、ケイト・マーラ演じる「リー・ウェザーズ」二人の対比がせつなく、美しく描かれています。モーガンが抗う様は人間の子供のようで、結末の残酷さを一層引き立てます。雰囲気や結末はとても好みでした。
しかし、冗長な面も多分にある作品で、結果的に「エンディングが全て」という印象になってしまったのが残念です。ハリウッド大作のようなテンポの良さを求めると少し期待はずれかもしれません。更にこの話はリー・ウェザーズにフォーカスすればするほど、結末が読めてしまう。個人的には繰り返される退屈な格闘シーンではなく、もっとモーガンにフォーカスすることで、その異質さに気づかせて欲しかった。2016年にレビューした『エクス・マキナ』は作風も近く、その点は飽きない工夫が凝らされていたなと思います…似て非なる作品、比べるのは野暮かもしれませんが。

◆『グランド・イリュージョン』2013年公開/アメリカ
ラスベガスで行ったマジックショーで、遠く離れたパリの銀行から大金を奪ってみせた
4人組イリュージョニスト「フォー・ホースメン」数ヶ月前まで路上マジシャンだった彼らの目的とは。FBI捜査官のディランとインターポールのアルマは、一躍有名人となった彼らを逮捕するのだが…。

◆『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』2016年公開/アメリカ
派手なパフォーマンスで世間を騒がせた「フォー・ホースメン」 前作の後、身を隠していた彼らだが、ハイテク企業の不正を暴く為、遂に沈黙を破り新たなショーを仕掛けることに。 しかしショーは妨害を受け、失敗に終わってしまう。 天才エンジニア、ウォルターが仕掛けた罠にまんまと嵌められてしまった彼らは…

2作合わせて個人的ベスト5入りした作品。1作目冒頭のカードマジックで見事引っかかったら、あなたもすっかりこの作品の虜です。『ピエロが僕らを嘲笑う』『ユージュアルサスペクツ』タイプのマインドファックムービーですが、とりわけ視覚効果がとにかく派手で見ていて面白い。作品の本質も「近くで見るほどみえなくなる。」と、劇中で語られるようにまさにマジックの如し。日本語版の宣伝は「貴方は絶対騙される」的なコメントを入れて無駄に煽ってくるけど、疑いすぎずマジックショウを楽しむ感覚で観た方が得な作品です。メンタリストの存在や大規模なマジックではご都合主義的な側面は否めないもののストーリーはよく練られており最後までオチが読めませんでした。

2作目ではアイに加入した彼らの躍進が続く…!と思いきや。今度はホースメン側が素性を暴露され追われる身に。苦戦を強いられる予想外の展開です。前作と比べマインドファック・ムービーの要素は薄れ、視覚的派手さで劣るところはあるものの、ローズの過去を描き、3作目に向けてホースメンやアイとの絆を固めた納得の2作目という印象でした。あらすじから手品VS科学対決を期待すると期待はずれかもしれません。最後にはド派手にウォルター達を騙し、かっこよく決めてくれたホースメン。そして彼ら自身もまた騙されていた、という展開もお決まりになりつつ。3作目も製作中という事で公開が本当に楽しみな作品です。

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今年はこんな感じの個人的ベスト5でした。
他ベスト5候補だった『オデッセイ』は絶望的名状況にも関わらず、前向きに過ごす主人公に好感が持てる作品でした。『ハドソン川の奇跡』こちらも重い人間ドラマで素晴らしかっただったのですが、既に2作同監督作品が入っているので…。邦画では『非・バランス』『gift』。いずれも丁寧な心理描画でとても良かったのですが、私自身が邦画と洋画では求めているポイントがかなり異なるので一緒くたにできません。『ビューティフルマインド』や『ラストベガス』も作品としてとても好きでした。来年も素敵な作品に沢山出会いたいものです。

その他今年見た映画作品
『セントラル・インテリジェンス』『コンスタンティン』
『イミテーションゲーム』『I AM LEGEND』『交渉人 真下正義』
『亡国のイージス』『オペラ座の怪人』『ライフオブパイ』
『ザ・ディスカバリー』『クロワッサンで朝食を』『メメント』『マイ・インターン』
『アノマリー』『ニューヨーク眺めのいい部屋売ります』
『テイク・シェルター』『世界の中心で愛を叫ぶ』

ドラマ
『ファインディング・カーター』『HELIX ‐黒い遺伝子‐』『ベドラム』


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