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20221/15

2021映画のおはなし。

あけましておめでとうございました。
1月も半分過ぎてしまいましたが毎年恒例、今回も2021年に鑑賞した映画作品を振り返ります。
 

2021年は最も多く映画を鑑賞した年でした。
コロナ禍で自宅時間が増えた(ことによって午後ローを沢山みた)こと、Amazon PrimevideoやNetflix、Disney+等、サブスク契約の機会が充実していたこともありますが、やはりVRChat映画関連コミュニティで映画好きな皆様からのおすすめを観るようになったことが本数を伸ばした一番の理由な気がします。さすが映画好きが勧めるだけあって、教えていただく作品はどれもおすすめポイントが明確で面白く、どんどん積み映画が増えていき、いまだに消化できてはおりません。加えてサブスク配信が終わりそうな作品を見たり、アマプラの月替わり100円セールに手をだしたり、更には食わず嫌いをしていたMCUにも手を出したことで一気に収集がつかなくなりました。多分2022年も収集はつかないことと思いますが、これはこれで良い気がしています。映画鑑賞会をきっかけに見返した作品も多く、おかげで今年の鑑賞作品数は覚えているだけでも102本と最多記録。
 

さて、そんな私のベスト5。
ベスト10を選ぼうかと思ったけど5位以下は割と評価が横並び気味で逆に難しかった。
※このBlogはネタバレを含みます、あまり配慮していないので気にされる方は適宜読み飛ばしたりしてください。

 
 

『スペース・カウボーイ』2000年公開/アメリカ

アメリカ空軍のテストパイロットチーム”ダイダロス”
彼らは
アメリカ初の宇宙飛行士になるはずだったが、マーキュリー計画によってその夢は潰えてしまった。
技術者として従軍し、やがて退役、40年余りが経った頃、ダイダロスのメンバー フランクのもとにNASAから突然の協力要請が。旧ソ連軍によって作られ、今なお使用されているという通信衛星「アイコン」が故障し制御不能に陥ったというのだ。聞けばこのままでは地球に落下する恐れもあるという。古いシステムのため設計に関わった技術者の生き残りはフランクだけ。なぜアメリカが作ったシステムが旧ソ連で使われることになったのかと疑問を抱きながらも、フランクは自らとダイダロスのメンバー全員が直接宇宙に行き修理することを条件に要請を引き受けるのだった。

今年のベスト1は『スペース・カウボーイ』
クリント・イーストウッド監督作品のおじいちゃん映画という時点で、この作品が私のツボを抑えているのは言うまでなく…しかしそこ以外の要素も大変魅力的。人生の大半この作品を知らずに生きてきたことが真面目にショックだった1本。比較的コメディ色も強く、私が思うイーストウッドとは少し毛色が違う作品でもあった。
本作に登場するパイロットチーム”ダイダロス”の面々、キャストは主人公フランクにクリント・イーストウッド、腐れ縁の相棒ホークにトミー・リー・ジョーンズ、脇を固めるジェリーにドナルド・サザーランド、タンクにジェームズ・ガーナー。全員が”それなりの年齢”で老眼が酷く視力検査でズルをするし、女性スタッフを口説いたりもするけど、全員が確かな技術を持っており自動操縦頼りの若造には負けない。軽口を叩きながらも互いに強い信頼関係で結ばれていてとてもかっこいいのである。チームダイダロスのかっこよさが本作一番の魅力。
バディ物としての側面もあったりする。中でも若き日に喧嘩しながらも切磋琢磨していたフランクとホークの関係性は特に良い。初見の午後のロードショーでは冒頭シーンがだいぶカットされており、若き日の彼らが一部分しか描かれず、2人の関係性に少々説明不足を感じていたけれど、後に購入したBlu-rayを観て納得。2人の印象も、延いてはエンディングの印象も大きく変わってしまった。午後ロー版もテンポが良くてとてもいいのだが、楽しむならやはりノーカットがおすすめ。
2人は仲良しじゃない、どちらかというと仲は悪い。まさに好敵手的な関係だけど、お互いの事は言葉にせずとも一番分かってるし認め合ってる。そんな描写が上手く脚本の随所に練り込まれているのがたまらない。フランクの奥さんに彼(フランク)のことを頼まれた時のホークの表情や受け答え、ホークの選択を尊重するフランク…秀逸な描写が沢山あるし、それぞれの気持ち、台詞ひとつ表情一つでありありと伝わってくる。どこをとっても素晴らしい。
宇宙での活動がメインミッションだけど、そこに至るまでの人間ドラマが実に緻密。バディ物、チームの共闘もの、コメディ、恋愛と要素全部盛り、なのにしつこくないのが凄いところ。もうひとつ意外なところでは主人公フランクとかつての上司ガーソンの関係性もまた良い。『ザ・ロック』のメイソンとウォマックのように、ガーソンは保身が大事なずる賢い存在で部下をも上手く利用するのでフランクとの仲は最高に悪い。悪いんだけど煙たい存在ながらもフランクの実力は認めてるという。この2人の描写はそれほど多くはないけれど魅力的な要素だった。

突飛な設定でも彼ら唯一の欠点(?)である”加齢”が一番目立つ訓練シーンをコミカルに描くことで退屈も中だるみもせず、むしろお茶目なダイダロスのキャラクターが表現されていた。生意気でナメ腐った態度で絡んでくる若造を経験で黙らせるシーンも嫌味なく素直にかっこいいと思える。老害感なく展開していき、かつ彼らが年相応でもある描写もしっかりなされているので不思議と非現実感がない。ハリウッド全部盛りで様々な要素が詰め込まれているのに、絶妙なバランスで楽しめるのが本作のすごいところ。まぁ宇宙に行けてよかったよかった、で終わる筈もなく…アイコンには秘密があり更に一悶着あるわけなのだけど、ここからは是非是非作品を観て欲しい。Fly me to the Moonが特別な1曲になること間違いなし。

 
 

『ジョーカー』2019年公開/アメリカ

貧富の差が激しい大都市”ゴッサムシティ”で暮らすアーサーは、派遣ピエロを生業として日銭を稼ぎながら、年老いた母親の面倒を見る日々を送っていた。持病のトゥレット症、大量の薬とカウンセリングを必要とする困難な生活だったが、彼は一流コメディアンになるという夢を持っていた。しかしその人生は様々なきっかけにより変わっていくことになる。

2021年3本目に観た映画。とんでもないものを観てしまった、それが最初の感想で、ここから1年『ジョーカー』を超える作品に出会えるだろうかと心配になるほど、1週間位はずっとこの作品が頭から離れなかった。DC作品は愚かバットマンもダークナイトくらいしか観ていないにわかぶりなので、本作が”どういう立ち位置の作品か”はここでは置いておくとして、妄想と現実が曖昧に描かれる世界で、アーサーの絶望だけは真実なのではないかと思った。劇中の「狂っているのは僕か、それとも世間?」という言葉に尽きていて、世間にとって彼は歪だった。でも彼からみれば世間は歪だった。正義の形が違うだけのこと。在り方が違うだけのこと。水の低きに就くが如しとはよく言ったもので、絶望や悲しみといった人の心もまた低きに流れるのが必然だよなと、妙に納得した作品でもあった。
アーサーの行動を知った大衆は勝手に都合のいい共感をして、彼を死刑人というダークヒーローに担ぎ上げる。暴徒となった市民が富裕層を襲い間接的に後のバットマンを生み出すが、バットマン自身もまた親を奪われた憎しみや復讐といった負の感情を原動力に正義を求めるようになるのなら低きに流れた者の1人なのでは。(私が知らないだけでもっと異なる設定もあるのかもしれないけど、バットマンって金に物を言わせた最新鋭の科学技術と力業で、犯罪者の心を慮るでもなく叩きのめす高慢な富裕層なんだよなぁと考えると皮肉な存在にも思える。)

バットマンが正義の元に犯罪者を叩きのめそうとも、ジョーカーに共感するものは架空の世界にも現実にも沢山いて、絶望、復讐、孤独といった負の感情は当たり前にあり、流されるのを止めることは誰にもできないのではないだろうか。ジョーカーを名乗らないだけの”アーサー”は沢山いる。私もこれを見て無意識にあの暴徒化した市民と同じように、勝手に自分の一部をジョーカーに重ね合わせたように思うし。
例えば冒頭で子供を笑わせようとしたアーサーを邪険に扱った母親だとか、アーサーに暴行を加えた少年達だとか。彼らももしかしたらあの暴徒の中にいたかもしれないよねって思うと、非常に滑稽で、空虚で、そこが素晴らしい。暴徒に囲まれて血にぬれた唇で笑う姿は、妄想じゃなかったんじゃないかな。こういう気持ちにさせてくれる作品はなかなかない。
アーサーが同僚のゲイリーを逃がしたシーンが印象的だった。彼が狂人ではなくきちんと心をもった人間であることを証明するようなシーンで。ただキャラクターとしてのジョーカーを深掘りした作品ではなく、ジョーカーというキャラクターを使い物語に深みを持たせた作品だったようにも思うので、ファンの方的には賛否あるのかもしれない。

 

 

『潮風とベーコンサンドとヘミングウェイ』1993年公開/アメリカ

文豪ヘミングウェイとレスリングをしたことが自慢の元船乗りフランクと、物静かで知的な元理髪師ウォルト、対照的な性格の2人の老人が育む友情物語。

フランク役にはリチャード・ハリス、『許されざる者』ではガンファイター イングリッシュ・ボブ、『ハリーポッター』シリーズではダンブルドア校長と役の幅が広いバイプレイヤー。気品ある好好爺から粗野な船乗りまで演じ分けの幅が広く同一人物とは思えないほど。ウォルト役のロバート・デュヴァルも同じくで『ウォルター少年と、夏の休日』では無愛想でとっつきにくい老人を演じており、本作のキャラクターとは真逆。役者本人のキャラクターを見失いそうになるほど、フランクもウォルトも魅力的に描かれている本作。
対照的な2人の友情物語というテーマ自体はありがちなのだが、この年齢になって育まれる友情物語はひと味違うなという感じ。粗野なフランクは全裸腕立て伏せが日課で、早々にこれどうすんだよって感じのシーンで始まるも、髪ぼさぼさ、ファッション微妙だったのがウォルターに影響され少しずつ気品を身につけていくし、ウォルターもいつも同じ席でいつも同じベーコンサンドをかじってお気に入りのウエイトレスと同じ方向のバスに乗るのが日課という陰キャムーブなのだが、フランクに触発されて積極的な行動も取れるようになっていく。歳を取っても人は変わるのだな。
不器用だけど気の良いフランクは「そのベーコンサンドは腐ってる(から一緒にカフェ行こうぜ)」とウォルトを誘ったり、結構お茶目で可愛らしい。(勿論ベーコンサンドは腐ってない)2人とも相応に悩みもあったり寂しさや孤独を抱えていたりするんだけど、時にはさりげなく、時にはおせっかいな優しさでお互いに癒やしと刺激を与え合い、充実した日々を送り始める過程が微笑ましく描かれている。特にウォルトに散髪をしてもらってスーツできめたフランクは格好良くて好き。少年みたいにはしゃぐ二人、案の定喧嘩しちゃったり、後悔してしゅんとしちゃったり。お決まりの展開ながらもにやにやしてしまった。せつないラストを迎える作品だけど、だからこそ彼らの関係が特別な思い出になるのだろうと思ったりもして。こちらは勧めていただいて観た作品だったのだけど、出会えて本当に良かった。

 
 

『ウォルター少年と、夏の休日』2003年公開/アメリカ

1960年代のテキサス、14歳のウォルターは母親の勝手な都合で大叔父2人が住む田舎の家に預けられる。
大叔父達はかつて莫大な財産を手に入れたと噂されており、母親はウォルターに金の隠し場所を突き止めるように言い含んで半ば強引に彼を置いていってしまう。大叔父2人はセールスマンをショットガンで追い払うことを楽しみにしているような変わり者、慣れない場所で半ば強引に始まった共同生活。その日の夜、ウォルターは寝間着のまま庭を徘徊する大叔父ハブの姿を目撃して…?

先述の『潮風とベーコンサンドとヘミングウェイ』で知的な老人ウォルトを演じたロバート・デュヴァルが、今度は腕っ節は強いが無愛想でとっつきにくい大叔父ハブを演じている。どちらかといえばまだ多少柔和な雰囲気がある大叔父ガースをマイケル・ケイン。マイケル・ケインといえば個人的にはバットマンで演じた気品溢れる執事役が印象的な個人的大注目おじいちゃんだ。他にも数々の作品に出演してする豪華キャストで送る名作である。

タイトル通り少年の夏の思い出的映画なのだけど、3人の友情物語もありつつ、ガースが語る大叔父2人の冒険譚には嘘とも本当とも分からないわくわくが潜んでおり、最後の最後まで「あぁ…良い」と思える作りになっている。ウォルターとハブがコーン畑のジャングルを眺めるシーンが最高だし、ライオンも良い。まさに夏に観てほしい1本。こちらもオススメしていただいて初めて観た映画だった、これも出会えてよかった。

 
 

『大誘拐 RAINBOW KIDS』1991年公開/日本

刑務所帰りの若者3人組は「更生してやり直すにも金は必要である」と、1人の老女に目をつける。紀州の山林王で大富豪の柳川とし子を誘拐すれば、家族も必ず身代金を用意するだろうと考えたのだ。しかし誘拐を決行し身代金5千万円を要求しようとするが、それを聞いたとし子は100億円を要求しろと言い始め計画は思わぬ方向に転がっていき…

古き良き邦画という感じで最後まで面白かったなぁ。ちょっと間抜けな3人組が大地主のおばあちゃんを誘拐するも、おばあちゃんに身代金5千万を100億に変更するよう要求されちゃう話。予想外に頭がキレるおばあちゃん、そして賢くない3人組、なぜかどんどん大規模になっていく計画と、ふいに生まれる誘拐生活中の人間同士のふれあいも見所。当初90年代風の映像だけど序盤知らない役者さんばかりで一体いつの作品なんだ、と思っていたがよくよく観ていると若い頃の樹木希林さんや緒形拳さん、岸部一徳さんが出ており、ものすごく豪華キャストだった。正直みんな私が知っている時代より若すぎて一瞬誰だか分からない人が多い。
柳川とし子は策士、飄々としているけど頭がきれてかっこいい。分かる人にしか分からない表現ではあるが、おばあちゃん映画とBBA映画の中間である。若者3人組が次々と懐柔されていく様子に笑ってしまうのだけど、いかにも大地主っていう感じの器の大きい老女を北林谷栄さんが生き生きと、堂々と演じてらして、そのギャップというか、変なチーム感がとてもいい。これが”日本一のおばあちゃん女優”なのか。ちなみに後で知ったけれど北林さんは『となりのトトロ』のカンタのばあちゃんである。

 

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以下、その他作品の感想諸々
 

『ステージ・マザー』2020年/カナダ
テキサス州の教会コーラス隊で指揮をしている主婦メイベリン。彼女にはリッキーという息子がいるが同性愛者であることをカミングアウトされてからは夫婦共々疎遠になっていた。そんなある日リッキーが亡くなったという突然の連絡を受け、彼女は葬儀に参列するため息子が暮らしていたサンフランシスコを訪れる。そこで知らされたのはリッキーがゲイバーのオーナーであったということ。メイベリンは店の権利を相続することになり…

ドラァグクイーンとして活動していた息子の死を悼みながら、息子の親友やパートナー、店子達と友情を深めつつ店を再建する話。メイベリンは敬虔なキリスト教徒だが、どちらかというとリッキーに歩み寄れなかったのは父親のほう…リッキーの気持ちに寄り添えなかった後悔があったんだろうなぁ。メイベリンは持ち前の明るさでみるみる皆のマザーになっていく。説明は少ないが上手く映像や描写でみせている。とてもテンポ良く進むので意外にも見やすい。天使にラブソングを的な面白さもある。序盤トントン物事が進んでいくのでご都合主義っぽい展開多めかと思いきや、全部が全部が上手くいっているわけじゃなくて、僅かに問題を残しつつ…と、観ていて気持ちいいバランス。ラストの舞台演出はよかったなー。リッキーの周囲の人々も問題を抱えているけど、メイベリンと出会うことで一歩踏み出せたりもしてて温かみがある素敵な作品。もっと続きが観たくなっちゃう。
 

『ホテル・ムンバイ』2018年/オーストラリア・インド・アメリカ合衆国

インド、ムンバイのタージマハル・ホテルに勤務するウェイターのアルジュン
妻子を養うためいつも通り出勤をした彼だったが、突如ムンバイ市内12箇所が襲撃される同時多発テロが発生。
タージマハル・ホテルにもパニックになった一般市民が押し寄せスタッフ達は混乱、やがてホテル内もテロ集団に占拠されてしまう。十分な対テロ訓練を行っていなかったムンバイ警察ではテロリストを制圧できず、ホテル内に取り残されたアルジュンと一部のスタッフ、宿泊客は怯えながらニューデリーの国家保安警備隊が到着するのを待つことになる。


イライラする局面多し。テロリストに見つかれば殺される逼迫した状況で泣き出す赤ん坊、こんなところにいられるか!とお決まりのパターンで勝手な行動をする客、マスコミに情報売って間接的にテロリストに逃走することをバラす賢くない客、うぉぉぉぉぉイライラする!イライラする!けどとてもいい作品だった。神を語る首謀者にいいように使われ、多くを殺害し、自らも命を落としたテロリストの青年達。彼らもまた犠牲者であり、家族に送る金と引き換えに「聖戦」という枷をはめられ詭弁に踊らされたのだ。もう大半死ぬし全然ハッピーじゃない。お客様を守る為に残った従業員達の行動は素晴らしいけれど、通用口から帰った従業員達にだって家族はいるし責められない…もう誰も幸せにならないなにこれ。凄く苦しい悔しい辛い作品だけど、観て良かった。これは心に突き刺さる。というかこれ実話なのよね…その分イライラもすごくて「ウワァァァァとんでもねえ行動とるじゃんおまええええ」ってのが頻発してとても疲れるのだけどいい。マゾい人は観るべし。首謀者が今も捕まってないなんて…恐ろしい話である。
 

『クリスマス・クロニクル2』…Netflixオリジナルのクリスマス映画。
前作1は兄のテディがメインで、今回は妹のケイトがメインのお話。前作では描かれなかったサンタ・ヴィレッジが描かれたりする。2人の母親が再婚する気配、兄のテディはすっかり大人びて母の再婚にも賛成している様子だけど、妹のケイトは父を失ってから僅か2年しか経っていないので内心複雑…そんな簡単に切り替えられないよね。今回エルフ界の問題児ベルスニッケルの罠にかかりサンタヴィレッジが大パニック、ベルスニッケルもサンタが自分を見てくれなくなった寂しさから反抗をしているので、ケイトと心情がシンクロしているという。そうだよね、好きな人が自分を見てくれなくなるんじゃないかって思ったら寂しいよね、でも忘れてなんていないこと、愛してくれていることを信じないとだめなんだよね。でもそれって難しいよねぇ…。映画みたいにすんなりとはいかないよって私は思うからこそ、最終的にちゃんと母親の幸せを願って新しい家族との道を受け入れたケイトは偉いよ。血の繋がらない弟(予定)のジャックも登場。皆で冒険して神経質なところがとれて勇気を手に入れたり、ちょっと『学校の怪談3』的な良さがある。今回もこんなサンタクロースいいなって思わせてくれるかっこよくてお茶目なサンタをカート・ラッセルが演じている素敵な作品でした。前作と共に子供の頃に見たら絶対わくわくするやつ。3も作ってくれないかなぁ…。

『LEGOムービー』『LEGOムービー2』…おすすめしていただいた作品。見たことない気がしていたけど、見始めたら「あ、これ歯医者さんのキッズコーナーで流れてたような」ってなった。冒頭が『トゥルーマン・ショー』に近い印象でディストピア感が漂う作品だなぁと思ってたらディストピアだったでござる。平凡で印象にも残らないどこにでもいる主人公、どういうテンションの作品か最初はわからなかったのだけど、完璧で秩序ある世界を望んでいる大人(おしごと大王)と、世界観ぐちゃぐちゃでも自由に好きな物作ってもいいじゃないという子供の話だった。力を合わせればなんだって作れる。スパボンは完璧な形で固定するためのボンドで、主人公がみつける奇跡のパーツはボンドのキャップ、LEGOの姿で登場するヒーロー達も見所のひとつ。LEGOで描かれた海とかすごかったなぁ。あと吹き替えのキャストさん達、1人で何役もこなしていてすご。2はそのまま1の続き、前回の台詞が伏線となり、またしても新しい問題を投げかけてくるレゴムービー2。こちらもなかなかに考えさせられる内容でした。

『ある女流作家の罪と罰』…かつてベストセラー作家だったリーだが、文筆業で生計がたてられなくなり生活は困窮。遂には自らに宛てられたキャサリン・ヘプバーンからの手紙を売りに出すことに。それが思いがけず高値で売れたことから著名人の手紙を捏造することを思いつく…というお話。これが良い感じにまとまった作品でとても気に入った。文筆を生業にする人が超冒涜的な方法で稼ぎ始めるのでおいおい…って感じではあるんだけど、主人公リーや悪友ジャックの弱さ、脆さ、危うさが人間くさくて魅力的。僅かに寂しさを埋め合うような描写も素敵だった。作品の印象としては『運び屋』と近い。原作はリー・イスラエルの自伝『Can You Ever Forgive Me?』。許せるか許せないかでいったら私は許せないし、共感もできないのだけど最後までなんか憎めなかった。この複雑な気持ちにさせてくれたあたりが、この映画の一番好きなところ。

『イーストウッド語られざる伝説』…語ることはなにもない。ただただ最高だから全イーストウッドファンは見るべし。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』…アニメから見守り続けてウン十年、長きにわたるエヴァの歴史に遂に幕
個人的には終わり方には満足だし適度に謎も残していて良いと思いました。旧劇をみたのと同じ劇場でシン劇鑑賞していることに気づいて感慨深かった。

『ベル・カント とらわれのアリア』…1996年にペルーで起きた日本大使公邸占拠事件から着想をえた小説が原作。リマ症候群といえばそれまでだけど、人間の心も善悪も簡単に線引きできないし…そういう意味で観た人をきちんと複雑な気持ちにさせてくれる素晴らしい作品でした。後味は悪いぞ。派手さはないけど登場人物達の人間らしさが見え隠れして、すっかり作品に入り込んでしまった。あらすじを知った時点で映画が終わりに近づくということが何を意味するのか、否応なく解った上で観ることになるのに、皆でサッカーするシーンは「ずっとこう在って欲しい」と思わずにはいられなかったなぁ。オペラに詳しくないけど、敢えて副題をオペラとかけたのはやはりロクサーヌ・コスが言うような意味なのだろうか…つらみ

『ジーサンズ はじめての強盗』…年金を打ち切られたおじいちゃん3人が銀行強盗するコメディタッチなクライム映画。世知辛い設定ながら悪友であり家族のような3人の関係性にほっこりして、オイオイって思いつつも最後まで微笑ましく観られた。少々ご都合主義的な所もあるけどそこも含めて好き。脚本は「ヴィンセントが教えてくれたこと」のセオドア・メルフィ。主演はマイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、アラン・アーキン。何気にクリストファー・ロイドも出ていて豪華な布陣。しかしバック・トゥ・ザ・フューチャーまだ未履修なんだなー。結局2021年は未履修で終わってしまった。マイケル・ケインは相変わらず気品があって素敵ですね。今年すごく沢山マイケル・ケイン見てる気がする。てか『グランドイリュージョン』『インセプション』『インターステラー』にも出てるので…既にめっちゃいっぱい見たことあったね()

『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド』…わかるっちゃわかるが、わからないっちゃーわからない。取りあえず袋かぶってぐーるぐる。でもこれで「鹿殺し」が成立するなら医者ってめちゃめちゃハイリスクな仕事ってことにならない?

『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』…最後まで引き込まれてしまったなぁ…なんなら見終えた後にもう一回観たくなる系のクライムサスペンス。フランス映画特有のわかりにくさも目立つけど、考察したり巻き戻したりしながらゆっくり楽しんだ。劇場鑑賞より配信向きかも。有名小説の翻訳の為に9人の翻訳家が集められる。機密保持のため外界との接触は禁止…なのだけど、連れて行かれるシェルターが住みたいほど素敵だった。綺麗な個室、プール、ボーリング場、バーカウンターに一生かけても観きれない程の映画!凄い楽しそうな監禁生活だよ。翻訳出来ないけど。(帰れ) 時系列が入り組んでいるので監禁生活の最中にも、時折出版社のオーナーが誰かと取調室で会話しているシーンが挿入される。会話の内容から誰が犯人なのだろうと展開を考えるのがとても楽しかった。

『皆殺しの流儀』…伝説の老ギャング達が仲間を殺したイキり若造ギャング共に復讐する話。若造共のイキりっぷりが凄いのでおじいちゃん達による拷問シーンは爽快感すらある。しかし暴力描写は意外と控えめでテンポもよくコンパクトにまとまっている。主演のイアン・オギルビーが激渋かっこいい。これ日本では劇場公開無しビデオスルーされた作品なのだとか。続編を匂わせる終わり方をしていて、実際2作目と3作目は既に制作公開されているようなのだけど、残念ながら日本語版がなさそう。頼む…2,3作目も配信してくれぇぇ…。破天荒系もいいけどやっぱりアウトローおじいちゃんといえば紳士的な振る舞いに大人の余裕、気品と美学よ。

『残酷で異常』…タイトルのフォントが絶妙にダサいのでB級なのではないかと各所で疑われていた作品。そんなことはない、名作なのだ。妻を殺す場面を繰り返してしまうタイムループもの。これ以前から気になっていた作品なんだけど…良い意味でかなり異質。淡々と展開するので絵面に派手さはないが退屈もしない。脚本や構成が巧みで目が離せなくなる。それに非現実的なようで案外日本人には馴染み深い話かもしれない。おそらくタイトルから受ける印象とは少し違った内容、少なくとも残酷描写はないしホラーでもない。邦題おかしい系でもなくこれが正しい。最後まで観ればその辺も納得できるはず。人によって受け取り方様々かもだけど私はかなり好きなラスト。これは「いい映画」として記憶に強く残るだろうなぁ…こちらも日本では劇場公開されずアマプラ配信のみ。

『ロング,ロングバケーション』…ガン泣き。観たことを後悔するくらい複雑な気持ちになるけど、同じくらい観て良かったと思う作品。老年夫婦が寄り添う姿が辛くて生々しくて美しい。末期がんの妻とアルツハイマーの夫がキャンピングカーで旅をする。2人の人生を追想するロードムービー。ヘミングウェイを敬愛する元文学教師の夫、ジョンを演じていたのはドナルド・サザーランド。”遠く”にいってしまう時のにこやかな表情、ふと記憶が戻った時の戸惑いの表情、その全てが恐ろしいほど素晴らしかった。派手な動きは殆どないのに…目は口ほどにものを言うって正にこのことか。妻のエラ(ヘレン・ミレン)はジョンに呆れたり驚いたり時には喧嘩したりもするけど、やっぱり誰より夫を理解して愛しているんだなと自然と伝わってきた。旅を通して2人の人生をちょっとだけ垣間見る、万人受けする映画ではないだろうけど名作。

『レディ・プレイヤー1』…面白かった!確かにこれはVRやってたら絶対楽しめる作品。随所にゲームや映画のキャラクターが散りばめられててそれだけでも楽しいのにストーリーもとても良かった。エイチが良いキャラだったなぁ。溶岩のシーンはハラハラしつつもニヤっとしちゃった。最後に賛否両論あるのは言われてみればという感じ。

『オン・ザ・ロック』…浮気疑惑がある夫のことを妻が自分の父親に相談したら、親子で浮気調査することになっちゃう話。序盤はおいおいまさか本当に浮気を…?って胸がザワザワ。後半はせつなくて胸がザワザワ。はて、これはコメディですか?総評:お茶目なビル・マーレイを楽しむ映画。さらっとしたストーリーでやや緩急に欠けるけど、父親のキャラクターはリアルだった。少々前時代的で不器用、でも憎めない人柄で娘をとても愛しているプレイボーイ。こういうお父さん楽しそうだなって思いと、こんなお父さんだと大変だろうなって思いが入り交じる。娘にも父にも感情移入しちゃう。

『ファーザー』…混乱も戸惑いも見終える頃には全て他人事でなくなっていた。実際に誰もがあの孤独を体験する可能性がある。構成もとても巧みだったけど、アンソニー・ホプキンスの演技が凄まじい説得力だった。彼が”どちらのアンソニーなのか”分からなくなる程に。色々考えてつい真実を探りたくなってしまうけど、きっとそんなものに何の意味はないのだろうな…そしてラストシーンの台詞がとても美しかった。元が戯曲だからかな、詩的で哀しい言葉。作中アンソニーに対して随分な無礼を働く奴がおったな。あいつ多分次の日には脳みそ喰われるな。

『アラジン(実写)』…いやー面白かった。ランプを手に入れるシーンの迫り来る溶岩とか、お城でのキレッキレなダンスとかワクワクした。ジーニーの日本語吹き替え「それなー」って台詞回しが印象的だったけど、これとても良いなって思った。イメージ壊さずに現代的なノリが表現されてて。そして魔法の絨毯が終始可愛い。
我が家にも一枚欲しい…

『ペイルライダー』…イーストウッドかっこいい映画。主人公の名前も正体も明かされず謎に包まれているっていうのもいいなぁしかしバレットと一緒に暮らしている母娘2人共が牧師を好きになっちゃうとか、あの家めっちゃ微妙な空気流れてそうだな。巨大金塊を掘り当ててイキってしまったスパイダーおじさんも、金塊担いだまま街で呑んでたんかーい!序盤のミーガンの「犬とおじいちゃんを殺されたの」という台詞も(あっ、”おじいちゃんと犬”じゃなくて…)と思わなくもなかった。時折突っ込みいれつつもとっても楽しんで見られました。

『デビルシャーク』…主人公の方に「天使」ってタトゥが入ってることしか覚えてないけど、永遠に記憶に残る1本になりそう。

『くちびるに歌を』…軽い気持ちで見始めたら思った以上に心を抉られて困った。涙腺緩いマンにはぐっときてしまう。15歳という多感で無力な時期のどうすることも出来ない閉塞感がリアルで、大人に裏切られたり振り回された過去がある人には刺さる内容だと思う。特に自閉症の兄がいる桑原くんが書いた15年後の自分へ宛てた手紙がなんとも切なかった。恐らく15年後の彼がこの合唱経験を活かしてプロになりましたとか、そういうことはまぁないのだろうけど…それでもこの経験が彼に生きる喜びと、忘れることが出来ないかけがえのない時間を与えてくれたはず。登場人物が多いから描写が浅い部分もあるのだけど、劇中の課題曲でもある『手紙~拝啓 十五の君へ~』歌唱シーンの説得力は相当なもの。CMで主題歌を聴いたことがあったけど、映画を観てから聴くのとそうでないのとでは印象も違うなぁ…。乙一先生の別名義、中田永一先生の小説も読みたくなった。映画とは設定も諸々異なりそうだし。別名義作品群の中で唯一読むのを避けていた作品だったけどそろそろ解禁しよう。

『アイアンマン2』…私が持っているトニーとお揃いのウォーターボトル、思った以上に沢山登場してて嬉しかった。でも毒々しい青色の飲料入れるのには向いてないぞトニー…あっ、セレブは都度買い換えるからいいのか()アラジンの絨毯に次ぐ可愛い無機物発見、トニー家のロボットアーム!そういえば1にもいたっけ。アイアンマンはフェイズ1作品の中で唯一哀しみと縁遠い。自意識過剰でナルシスト、感情的で衝動的、ヒーロー然としないキャラクターだけどそこが憎めない。何気に世界観も一番好き。パビリオンの戦闘シーンでアイアンマンマスクを被った子供に「お見事!」って言うシーンめっちゃかっこよかったなぁ…

『家へ帰ろう』…アルゼンチンに住む仕立屋アブラハムは、自らを老人ホームに入れようとする家族の目を盗み1着のスーツを持って旅に出る。70年前ホロコーストから命を救ってくれたポーランドの親友の元へ…原題『El último traje(最後のスーツ)』
偏屈お爺ちゃんのロードムービー。派手な演出はないがそこがいい。目的地に近づくほど彼のトラウマが詳らかになっていく。足を引きずり悪化する病と戦いながら、夢現に回想が融け込んで自然と感情移入してしまう。道中出会う人々の優しさが心にしみる。原題も良いが邦題もなかなか、名作でした。一歩たりともドイツに足をつけずポーランドに行きたいというアブラハムを多くの人が笑うけど、声をかけてくれたドイツの学者は彼の感じてきた恐怖や苦痛の一部を垣間見たのか、何度酷い態度を取られようとも手を差し伸べようとしてくれる。駅のホームで自身の服を道に敷き、アブラハムにその上を歩かせるシーンはとても印象的だった。そしてその服をきちんと畳んで返し、彼女と言葉を交わした後、電車の乗り換えのために今度は自ら地に足をつけて歩き出す。彼は学者とのやりとりを通して、辛い憎しみに少しだけ整理をつけることができたのかな。憎み、怯え、嫌っていた、その気持ちは消える事はないだろうけど、ドイツ人というだけで当事者でなくとも過去の過ちについて語るドイツ学者や、ホロコーストを忘れないよう腕に数字の入れ墨を入れた末娘。アブラハムの足となってくれた飛行機で隣に座った若者、宿の女性スタッフ、看護師…多くの人達が彼の意思に寄り添ってくれた。偏屈で頑固なアブラハムだけど、きっとその優しさはひしひしと感じてると思う。

『潜水服は蝶の夢を見る』…意識はあり思考はできる、人の話も理解できるのに喋ることが出来ず意思を伝えることはできない閉じ込め症候群を煩ったELLEフランス編集長の回顧録。映像で見てみるとかなりの怖いよなって思った。映画のストーリー自体は自伝を書くこと、彼の過去の思い出と病院での風景を交互に描写していく、フランス映画だなという感じの独特の空気感。単語を組み立てるためにアルファベットを順番に読み上げてもらい、伝えたいアルファベットが発声された瞬間に瞬きをする。途方もない作業の繰り返し。娯楽作品としてみるのは圧倒的に向いてない。エンディングが一番衝撃だった。ジャン=ドミニック本人が実在して回顧録であるという意識でみていなかったもんだから。本作では奥さんが献身的に寄り添い、恋人は病院に現れないという脚色がされているけど、実際寄り添ったのは恋人で病院に現れず疎遠だったのは妻の方だったらしい。というか普通に愛人とかいて誠実な人ではない感じの人生でいらっしゃるけど…正直その辺の奔放さは特に共感できなかったので、入り込める映画かというとそうでもなかったというのが感想。でも「人間性を失わないこと」この状況下で、それは想像以上に難しいことで強靱な精神力が必要なんだろうなってあとから思った。

『フラガール』…数年前の作品な気がしてたけど2006年公開であった…。全然内容知らなかったんだけど笑顔で踊るフラダンサーが可愛くて元気でた。観て良かった。メインキャストの松雪泰子がやっぱりよくて、綺麗だけど迫力あって素敵だった。先生自身も生徒と一緒に成長していくのとても良き。豊川悦司の顔は何度見ても覚えられない。何気に寺島のアニキが出てた、やっぱりこういう役なのねw 脇を固める岸部さんとかの演技もよくて、良い作品だった。男性風呂に怒鳴り込んでいく松雪泰子かっこよ。あっ、松雪泰子の話ばかりしてるけど主演じゃないです。多分蒼井優さんが主演。

『ラスト・フル・メジャー』…普通に良作だったけど凡庸と言われるのもまぁわかるかも。一等空軍兵に勲章を贈るための調査を任命されたやる気かがない調査官が、PTSDを抱えた帰還兵達に会い彼らの話を聞く内に心が動かされて勲章授与の為に奔走する話。ただ主人公の心理描写が若干ふわっとしていた感はある。ラストシーンの授与式で起立するシーンはとてもよかった。実話だから、私のように実話を知らない人向けの映画としては良いと思うんだけどな。あと映像が綺麗、近年の作品ってこんな綺麗なんだな。

『ストックホルム・ケース』…後にストックホルム症候群の語源となるノルマルム広場強盗事件を題材にした作品。イメージと裏腹に妙に牧歌的で不思議な雰囲気だった。間が抜けているけど魅力的な面も備えた犯人像が上手く描かれている。90分の短尺でほぼ銀行内の映像と、動きが少ないのでやや上長に思え、感情移入するのは難しかったものの、あれが洗脳のプロセスなのか、本当に彼が持つ魅力を愛したのか、それとも恋愛に至る過程自体多少なりとも洗脳のプロセスをはらんでいるのか興味深かった。心理学で説明を後付けすることはできても、結局人間の感情ってそこまで合理的に切り離せないのだろう

『I, Tonya』…スケート選手トーニャ・ハーディング、母親に4歳からリンクに立たされていた彼女がナンシー・ケリガン襲撃事件、そして世間が冷ややかに目した94年リレハンメル五輪に至るまでを描く伝記作品。劇中で描写される彼女の生育環境は凄絶で、誰が被害者で加害者なのかと問われればトーニャも立派に被害者だった。問題行動、気性の荒さから世間が彼女をヒールと断ずるとも、彼女だって贅沢ではない望みの為に血の滲むような努力でトリプルアクセルを跳んだのだろう。スケートは愛される手段だった。23年間で唯一母親が優しい言葉をかけてくるシーンではマスコミに売るためなのか、事件の真相を録音しようしたテレコを潜ませている。この映画がいかに同情的に描かれたものだとしても哀しすぎるでしょ…。最後はスケートすら奪われてボクサーに転向。「真実などどこにもない」と言う一方でトーニャは熱狂する観客が囲むリングで殴られ、流血しながら「これこそが真実なんだよ」とも言う。この台詞は重かった。この映画含めどれも第三者が作りあげた虚像なのだろう。単なる伝記で終わらせない良作でした。あと何気『リチャード・ジュエル』のポール・ウォルター・ハウザーも出演している。

『サーミの血』…妹の葬儀の為に故郷を訪れた老女、彼女はクリスティーナと名乗り自身に流れる”サーミの血”に抗いながら生きてきた。この地に戻ったことで目を背けてきたサーミ人、エレ・マリャとしての半生を追想することになる。序盤にエレ・マリャが晒される好奇の視線、浴びせられる侮蔑的な言葉、当たり前のように起きる差別、どのシーンも心地悪い。彼女は生き方含めあらゆる現状から自由になりたかったのだろうな。人一倍優秀で聡いからこそ変えようとしたのだろうけど…例え変えなくても同じ心境に行き着いた気がする。サーミを懐かしく思う気持ちも残っている、でもオラこんな村嫌だって気持ちも超ある、周囲に馴染むために学友に話合わせて誰かを馬鹿にしたりもする(自分もされて嫌だったのにね)っていう…描写がリアルでしたね。エンディングがなんとも言えず。劇場公開時からずっと積んでたけど観て良かった。

『252生存者あり』…やべえ災害に突如襲われた東京。地下鉄の旧新橋駅に娘と数人の生存者と共に逃げ込んだ元ハイパーレスキューの主人公が奮闘するパニック映画。ものすごくレビューの得点が低く一体何がここまで作品の評価を下げているのか気になっていたのだが、見終えた今でもその原因は分からなかった。まぁ見舞われる災害が唐突すぎて荒唐無稽というか、野球ボールよりデカい雹が隕石のように降ってくるとか、新橋に襲いかかる謎の鉄砲水とか、海に沈むフジテレビとか、まぁ確かにといえばなのだけど、そんなことに拘っていたら世の中のサメ映画なんてどうなってしまうのか。私はテレビ局制作の邦画が結構好きだったりする。多様な役者を起用してくれるのがまず良い。脇を固める山本太郎、私は俳優山本太郎はとても好きだ。すごく好きだ。願わくばもっと昔のように映画やドラマで活躍して欲しい。隊長を支える役どころも良くて、良い演技で脇を固めていた。そして何故出てきた!という突然のルー大柴。いや、凄い良いと思う。

『トゥルーナイト』…アーサー王伝説を元に描かれた作品。アーサーがとにかく可哀想。アーサー王に嫁ぎにきた姫と、功績を称えて騎士に加えた男が密かに想い合ってるとか全然知らないで影できゃっきゃうふふされてさ、誠実な人柄で姫の国も守るよーって迎え入れてくれたのに、そりゃキレるわい。「人として許せても王としては許せない」そういっていたけど実際は逆で、王として気持ちを御することはできても人として許せなかったんじゃないか。アーサー個人の感情で裏切られた悲しみからの選択だったんじゃなかろうか。でも「私が勝手にそなたの夢を見たのだ」「私にはもう誇りなど残っていない」って、どの台詞もせつなすぎんのよ…そりゃ勝手にそなたの夢をみただけかもしれないけど、姫だって「あなたと結婚します」って言ってたじゃん!!おまえーーーってなるだろうし、一時の感情で民衆を集め尋問を行ったのも事実だけど、でもそうしたくなる気持ちもわかるってぇぇ。民衆に「戦え」っていうシーン最高だったな。王として国を守る、民も共に一緒に戦ってくれという、アーサーの王としての品位みたいなものが溢れてて最高によかった。袖にされるショーン・コネリーもかっこいいでやんすね。正直序盤のラブストーリーはどうでもええねん、リチャードギアがちょっかいかけなきゃええやんって気持ちで一杯じゃい。やっぱりコネリーが最高にかっこいいのよ…あーせつねえ

 
 

他…サムライせんせい/The Sunchaser/沈まぬ太陽/グッド・ネイバー/幸せなひとりぼっち/最高の人生の見つけ方(邦画)/シン・ゴジラ/おくりびと/アバウト・タイム ~愛おしい時間について~/MIB2(再)/ペルソナ3劇場版/許されざる者/タクシードライバー/ある少年の告白/時計仕掛けのオレンジ/オール・ユー・ニード・イズ・キル/ブラックスワン/ジョジョ・ラビット/主人公は僕だった/トランスアメリカ/Lovers kiss(再)/星の王子さまニューヨークへ行く/エジソン・ゲーム/TAG/グラントリノ(再)/パーマー/ボヘミアン・ラプソディ/ゾンビ特急地獄行き/スタンド・バイ・ミー/マイティ・ソー/キャプテンアメリカ ザ・ファースト・アベンジャー/アベンジャーズ/アイアンマン3/マイティ・ソー ダーク・ワールド/キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー/ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー/アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン/ドクター・ストレンジ/ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス/スパイダーマン ホームカミング/マイティ・ソー バトルロイヤル/ブラックパンサー/アベンジャーズ インフィニティ・ウォー/アベンジャーズ エンドゲーム/ヴェノム/キャプテンマーベル/キング・オブ・コメディ/ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド/2分の1の魔法/遠い海から来たCoo(再)/大統領執事の涙/スパイダーマン ファーフロムホーム/バケモノの子(再)/サマーウォーズ(再)/ファンタスティックプラネット/学校の怪談(再)/学校の怪談2(再)/学校の怪談3(再)/学校の怪談4(再)/星の子/カラーズ・オブ・ラブ/アメイジングジャーニー神の小屋 等々


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